大倉堂は2009年に立ち上げたブランドです。
大倉堂はじまりのジュエリーはコラボレーションジュエリーでした。
「三升」ジュエリーラフ画
今回から、その時のエピソードを3回に分けてお話したいと思います。
私が日本の美しさを表現できるようなブランドを作りたい、と立ち上げ準備をしているとき、幸運にも歌舞伎の十二代目市川團十郎さんとのご縁をいただく機会がありました。
そのとき、團十郎さんはヨーロッパ・モナコ公国での初の歌舞伎公演を控えていらっしゃいました。さらに、その折りにモナコのアルベール大公(お母さまはグレース・ケリーです)へ献上するプレゼントを探されている、とのお話を伺いました。
「世界に、日本を代表する芸能である歌舞伎を広めていきたい」という十二代目團十郎さんの強い想いに、同じく「世界へ日本のジュエリーを発信していきたい」と思っていた私は大きく刺激を受けました。私は、伝統技術を使った日本らしい繊細なジュエリー製作には絶対の自信を持っていました(もちろん今も)。
團十郎さんが、ジュエリーというアイテムをプレゼントとして選んでいただけるかどうか、は心配でした。しかし私は思い切って、「大倉堂オリジナルのジュエリーを創り、アルベール大公へのプレゼントとして提案する」というプレゼンテーションを行うことを決めたのです。
プレゼンテーションの場は、團十郎さんのご自宅にある稽古場でした。稽古場はまったく空気感が違い、異世界のようでした。床を拝見するだけで、どこか厳かで時の連なりを感じ、「今までにこの稽古場で様々な出来事が起こったのだろう」、と想像させられる場所でした。
用意していたデザイン画をご覧いただきながら、ジュエリーを通して世界に日本の職人技を示していきたい、という私の気持ちをご本人へ直接伝えました。幸いその気持ちにご共感いただき、その場でアルベール大公へのプレゼントとしてオリジナルジュエリーの製作をご依頼いただけたのでした。
ご依頼の内容は以下のような内容でした。
・モチーフは市川家の定紋である「三升」にしたい
・使用する色は市川家の色「團十郎茶」にしたい
・市川家を象徴する花「ぼたん」もジュエリーの中に入れたい(最終的には「ぼたん」のデザインは團十郎さん自らが描いていただきました。)
市川家(成田屋)として最も大切な「三升」の定紋をモチーフとして製作する許可をいただけたことは正直びっくりしました。團十郎さんの強い眼光で語られる「三升」に対する想いから、本当に真摯に歌舞伎に向き合っていらっしゃる気迫がひしひしと伝わってきて、身の引き締まる思いがしたことを今でも鮮明に覚えています。
お宅からの帰り道、300年は続いているであろう團十郎の名跡、市川家を象徴する「三升」、市川家の色「團十郎茶」、その伝統、歴史が積み重なった意匠の重圧を改めてひしひしと感じていました。と同時に、その「時の積み重ね」にわずかではありますが、自分も関わることができる喜びも感じながらオフィスに戻ったのでした。
写楽の浮世絵「成田屋三升」
https://www.fromjapan.co.jp より
團十郎さんとの打ち合わせ
大倉堂の技術を持ってすればきっと素晴らしい「三升」のジュエリーができるはずだ、と確信していました。ただ、今から思うと「製品化への不安」を思う余裕すらその時の私にはなかったのかもしれません。
このように「三升」のジュエリーの製作が始まったのでした。
今回はここまでにして、「大倉堂はじまりのジュエリー」の続きは次回のジャーナルでお話することにします。
大倉堂 OKURADO
大倉仁
2部はこちらよりお読みになれます▼
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