センターストーンがあるジュエリーをデザインして製作するときに最も気を遣うことは、その中心となる宝石の魅力をいかに引き出すかです。
ご存じのように宝石の魅力は「輝き」「色合い」「カットの種類」「形状」… とたくさんの要素があり、それらの要素がその宝石1つ1つの唯一無二の魅力になっているのです。今回はダイヤモンドがセンターストーンの場合の私たちなりの創り方の一部をお話ししたいと思います。
ダイヤモンドの魅力の1つはその輝きです。
プロポーションの良いダイヤモンドであるほど、シンチレーションと呼ばれる強いきらめきを見ることができます。
ただしジュエリーに仕立てる時には、台座となるプラチナや18金の貴金属でダイヤモンドをセッティングしなければならず、セッティングした部分のダイヤモンドは隠されその部分の輝きは見ることができなくなります。
大倉堂では、SSS(ステンレスススティールセッティング)という特別なセッティング技術があります。ダイヤモンドを固定する部分にだけ優れた強度をもつステンレスを使用することで固定する金属(隠してしまう部分)を極小にし、最大限にシンチレーションのきらめきを出す留め方です。肉眼ではそのセッティング部分はほとんど認識できないほど小さく、輝きを最大限に楽しんでいただけます。
下のダイヤモンドはSSSセッティング/周りの4つダイヤモンドはSSSセッティング
このセッティングに限らず、いかにダイヤモンドを金属で隠さないかでジュエリーに仕立てときのダイヤモンドの輝きが変わってきます。
ダイヤモンドのシェイプの違いやカットの違いでもその輝きは大きく変わります。
下の写真は4つの角が少し斜めになった長方形のダイヤモンド(英語ではCut-Cornered Rectangular Step Cut)のリングです。 御覧いただきたいのが、このダイヤモンドを留めているプラチナの爪の形です(爪の部分にもメレダイヤを入れています)。
ダイヤモンド左右のシェイプに沿った形状の爪(シンプルですが綺麗に形作るのは非常に難しい)で、このダイヤモンドの外形の魅力を生かしたデザインとなっています。
数年前に出てきたシェイプでカイト(西洋凧の形)カットというシェイプのダイヤモンドがあります。従来の雫型ペアシェイプをよりシャープにしたイメージです。
下の写真は、このカイトカットのダイヤモンドをデザインで強調し、ランタンに見立てて「灯(ともしび)」というタイトルを付けたリングです。
もちろんセッティングしている爪はシェイプを邪魔しないようにできる限り小さく、このダイヤモンドのシェイプの魅力を生かした作りとなっています。
できることならダイヤモンドそのままを見ているのが1番いいのでは、と思うほど美しいものに出会うことがあります。ただデザインをしてジュエリーに仕立てないと身につけることはできません。そこでいかに石本来の美しさを保ったままジュエリーにするか、石の魅力をより引き立てるようなジュエリーにするか、を考えてジュエリー製作をしていくのです。
美しいセンターストーンのジュエリーにはその美しさを引き立てる製作者、デザイナーのさりげないねらいが潜んでいるはずです。場合によってはそのねらいが気づかれないことがあるかもしれません。もし御覧になった方に気づかれなければデザイナー、創り手が成功した証です。
なぜなら創り手が何より引きたたせたいのはセンターストーンの美しさだけなのですから。
大倉堂 OKURADO
大倉仁
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