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2025.09.25

CATEGORY: ハイジュエリーの製作

大倉堂はじまりのジュエリー 2部 〜日本文化を愛して〜

前回のジャーナルでは、大倉堂として最初に創ったジュエリーである、歌舞伎の十二代目市川團十郎さんコラボレーションジュエリーのご依頼を受けるまでについて書きました。

 

私はモナコのアルベール大公への大切なプレゼントを立ち上げたばかりの「大倉堂」に依頼してくれたことに感激し、何が何でも「品格のある唯一無二」のジュエリーを作ってこのご厚意の恩返しをしよう、と強く思ったのでした。

 

 

 

「三升」ジュエリーのアイディアはすぐ頭に浮かびました。

 

アイテムはピンブローチにしてアルベール大公の胸を飾る。大倉堂独特の技術で、蒔絵師さんに「團十郎茶」の漆を「三升」の形に18金の上に施してもらい、その周りにダイヤモンドを繊細なラインでセットする。日本の職人による繊細な技術を用いた、歌舞伎の名門市川家にふさわしい堂々とした「三升」ジュエリー。 

 

もうこれしかない、と直感的にこのデザインに決めました。

 

 

 

デザイン画

 

 

 

 

製作は父の代から働いてくれている古参の職人に依頼しました。依頼内容、デザイン、最終的にお着けいただく方の話を伝えると、その職人は黙ってうなずき、最後に一言「わかりました」とだけ私に返答しました。

長年の付き合いから、この「わかりました」の一言は、もう職人の頭の中には立体が出来上がり、デザイン画以上のものを作ります、という意味だということをよく知っていました。私は全幅の信頼をおいてこの職人に造形を託したのでした。

 

実はこの職人は歌舞伎の大ファンで、次の日には家からたくさんの歌舞伎の本を工房へ持ち込み、「三升」のモチーフを研究し、18金、ダイヤモンド、漆を使った繊細だが力強い造形のプロトタイプを創り出すのでした。また、團十郎さん自身に描いていただいた「ぼたん」のデッサンをピンブローチの裏に透かし模様として糸ノコで再現していきました。 

 

創り出すその姿からは、ジュエリー製作の仕事を超えて、私たちの技術で日本の伝統美を表現しモナコの大公へ見てもらいたい、という意気込みを感じました。

 

 

 

 

私は、越前の蒔絵師さんのところへ漆の相談をしにプロトタイプをもっていきました。この蒔絵師さんとは数年前からの付き合いで、何としても貴金属の上に漆を直接施しダイヤモンドと組み合わせたジュエリーを創り出したい、という私の希望を試行錯誤してくれて実現させてくれた人でした。今回の依頼内容をプロトタイプとともに伝え、團十郎さんからご依頼の「團十郎茶」で漆を施してほしいと話をしました。

 

ただ問題がありました。それはこの江戸時代に流行した「團十郎茶」の色は、私もいろいろ調べてみたのですがはっきりとした定義がなく、市川家に問い合わせたものの色見本は存在しないとのことでした。そのことを伝えると蒔絵師さんもまた一言「わかりました」と言い、仕事場の奥の座敷からいくつかの歌舞伎の書籍を持ってきて調べ始めたのでした。 

(幸い私の周りの職人は皆言葉少ないのですが、妥協を許さず完璧な仕事をしてくれるのです)

 

 

 

 

團十郎茶

e色彩学校より https://colortest.jimdoweb.com/

 

 

 

 

東京に戻った数日後、蒔絵師さんから連絡があり、「團十郎茶」はたぶんこの色だと思う、漆で再現できるので一度見に来てほしい、とのことでした。すぐに私は越前に行き、文献を見せてもらいました。そこに載っている色は、まさに私が思い描いていた「團十郎茶」で、18金の色とも相性がよく、漆の部分はこの「團十郎茶」を施すことにしたのです。

 

 

大倉堂の職人も、蒔絵師さんも、そして私自身も、日本伝統の意匠、色を再現したい、形にしたい、そして海外の王室の方に見ていただきたい、という仕事という枠を超えた共通の想いに突き動かされていきました。皆、心から日本文化を愛しているんだな、ということをしみじみ感じさせられる瞬間でしたし、独自の伝統文化を持つ国に生まれたことを誇りに思った瞬間でした。

 

ただ、いざ実際に製作し始めると、完成へと至る道程は困難を極めることになるのでした。 

今回はここまでにして、続きは次回のジャーナルでお話することにします。

 

 

 

             

大倉堂 OKURADO

大倉仁

 

 

 

 

 

1部、3部はこちらよりご覧ください ▼

 

 

大倉堂はじまりのジュエリー 1部 〜製作決定まで〜

 

 

 

大倉堂はじまりのジュエリー 3部 〜モナコの夜〜

 

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