センターストーンがあるジュエリーをデザインし、製作するときに最も気を遣うことは、「その中心となる宝石の魅力をいかに引き出すか」です。
以前のデザイナーズジャーナルでは、ダイヤモンドをセンターストーンに用いた場合についてご紹介いたしました。
今回は、カラーストーンの「色」の魅力を引き出すジュエリー創りについてお話ししたいと思います。
カラーストーンの魅力の1つは、言うまでもなくそれぞれの石が持つ「色」です。
ルビー、サファイア、エメラルドの3大貴石ももちろん美しいのですが、最近では研磨技術の進歩や新しい鉱山の発見により、いわゆる半貴石と呼ばれる石の中にも、目を見張るような美しさを持つものが増えてきています。
カラーストーンには一つとして同じ色はなく、すべてがそれぞれ異なる色合いをしています。原色に近い強い色や、淡い色、光源によって変色する石、色名で言い表すことが難しい微妙な色を持った石、などなど。ジュエリーに仕立てるときはそのそれぞれの特徴を知り、いかにその特徴を生かしていくか、を考えます。
パパラチアサファイアというサファイアがあります。
色合いとしては「蓮の花の色」や「夕日のようなピンク寄りのオレンジ」などと言われる微妙な色合いが美しいサファイアです。私は淡い色合いが好きなので、大倉堂では「オレンジ寄りのピンクで淡い色合い」のものを選ぶようにしています。下のパパラチアサファイアネックレスは、K18YGのダイヤモンドを留める爪でシルエットをデザインし、全体にレーシーな印象を持たせています。
ダイヤモンドはカラーストーンの色合いを引き立たせる効果を持っています。ただ、あえてダイヤモンドの数は控えめにし、一部は落ち着いた輝きのローズカットを使用することでダイヤモンドの輝きを抑えた少しアンティーク調のデザインに仕上げました。
そうすることで、この微妙な「晴れた穏やかな日の夕暮れのような」パパラチアサファイアを引き立たせたのです。
K18YG、パパラチアサファイア、ダイヤモンド ネックレス
グリーンも私の好きな色の1つです。
新緑の季節の葉っぱの、美しいグリーンのグラデーションには心奪われるものがあります。
グリーンの綺麗な石としてはエメラルドが有名ですが、時として色が強すぎる感じがすることがあります。
それに対してガーネットやトルマリンはエメラルドのような深みのあるグリーンというよりは、淡く微妙で繊細な色合いのグリーンです。下のリングはポリッシュが良く、輝きの強いガーネットとトルマリンの2つの石をセンターストーンにしたリングです。周りのダイヤモンドも控えめにしたデザインにし、自然の新緑が持つ、微妙な美しい緑のグラデーションを表現しています。
K18YG、グリーントルマリン、グリーンガーネット、ダイヤモンド リング
カラーストーンは光源によって色合いが微妙に変わっていくのも魅力的です。
人工的なダウンライトの下と、自然光の下とでは見える色は変わってきます。
もし可能ならいろんな光源で色の変化を楽しんでみてください。
ルビーの「ピジョンブラッド」やサファイアの「ロイヤルブルー」といったような呼び名で選ばれる色もよいですが、私がおすすめするのは、皆様ご自身の目でご覧になり、皆様それぞれが心にぐっと響く色を見つけていただくことです。
ご覧になったときにまず「美しい!」と感じるものがやはり一番です。
色石はすべて違う色を持っていますので、もし同じような色合いが複数個あれば並べて比較してみるのもいいかもしれません。
私たち大倉堂の創り手は、石を選び、デザイン、製作、その各段階でひたすら皆様に「見た瞬間の美しさ」を感じていただけるよう日々努めています。
大倉堂 OKURADO
大倉仁
私の好きな色石について
本記事で登場したローズカットのダイヤモンドについてです▼