OKURADOでは、日本らしいジュエリーを創り出すことを常に考えています。
今回はなぜ私がそう思うようになったのかをお話しします。
以前お話ししたことと重複するかもしれませんが、私は今から30年程前にジュエリーの勉強のために3年間フランスに留学していました。
2年半暮らしたパリでは、本当にたくさんの人に日本の文化、芸術についてのことを聞かれました。(私の知識の無さから十分に答えることができなかったことを今でも後悔しています)
私が滞在していた当時から、フランス人は映画、アニメ、小説、浮世絵など、日本の芸術・文化に大変な興味を持っていました。フランスは日本よりもはるかに芸術先進国だから可能なかぎりフランス芸術を吸収したい、と思っていた私はフランス人の日本芸術への興味に最初はかなり面食らったのでした。
フランスや近隣のヨーロッパの国々の風景や造形物、美術館を見る機会が増えていくにつれて、日本との違いを考えることが常になっていきました。
いわゆる「日本の美意識」といわれる中にはいくつもの要素があると思います。
自然の移ろいに美を見出したり、不完全さの中に美を感じたり、空間(余白)に意味を見出したりといった点や、控えめな文化、アシンメトリーな造形などなど。
ルーブル美術館で見るヨーロッパの絵画や彫刻、装飾美術館で見たオブジェ・ジュエリーは素晴らしいものばかりでしたが、もっとシンプルな装飾にして表現したいものを絞り、その絞ったもののみを強調させて表現するのも面白いのでは、と感じることも多々ありました。
今思うとそれが、「日本の美意識」のひとつである「引き算」の美ということだったのだと思います。
ジュエリーは華やかなものです。
デザインは装飾的で、セットするダイヤモンドの輝きは煌びやかで、使用するゴールドやプラチナは丁寧に磨き上げられ光沢を放ちます。
その一方で、極端に華美にならず、できるだけ装飾をそげ落とし、心に静かに訴えかけるようなジュエリーもあるのではないか。それを日本で創り出すのはどうだろうか、とフランス生活も最後の時期に入ってから考え始めたのでした。
そのようなジュエリーが創り出せるのかどうか自信はありませんでしたが、もし「華美でないジュエリー」を創り出すのであれば、それができるのは私たち日本人しかいない、と確信していました。
日本に帰国してジュエリーのデザイン・製作の世界に入ったのちも常に「華美でない静かに心に響くジュエリー」を創ることは頭から離れず、その想いから2009年にOKURADOを立ちあげたのでした。
今でもこの独特な「日本の美意識」とは何かを考え、それは私たち日本人のどこから来るのかを考えています。
そして、私たちOKURADOが創るジュエリーが「日本の美意識」を体現するようなものになるよう日々励んでいます。
デマントイドガーネットのまわりに控えめに輝くローズカットを配したリング
結び目が作り出す美しい流れのみを表現したブローチ兼ペンダント
大倉堂 OKURADO
大倉仁
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