DESIGNER JOURNAL

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2025.02.26

CATEGORY: ハイジュエリーの製作

中間色の宝石が放つ魅力

今回は宝石の色について、私の思いを書いてみます。 

 

 

小学校に入ったときに学校からもらった、24色の色鉛筆を開けて見たときの感動は今でも覚えています。心奪われたのはグラデーションになった24色の並びの美しさと、赤、青、黄色、白 といった原色にはさまれていた、「きみどり」や「やまぶきいろ」、「だいだいいろ」といった間の色目でした。

 

大きくなって、もっと数の多い72色や120色の色鉛筆を見たときには、その全体の色の並びの美しさに時を忘れて見入ってしまいました。もしかしたらこのような経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

色数が多くなるともっと原色以外の間の色が多くなります。それらの中間色はその色だけでなく、色の名前を知るのも楽しいものでした。「あさぎいろ」「せいじいろ」「ふじいろ」「もえぎいろ」などなど。

 

 

 

宝石の話に移ります。

ジュエリー業界に身を置くと、圧倒的にふれる機会が多い宝石はダイヤモンドです。これは意外かもしれませんが、ほぼダイヤモンドしか扱わない会社が実は大半です。それはダイヤモンドが最も需要の多い宝石だからです。

 

ただ幸いなことに、本当に幸いなことに、私の会社は入社した当時から、ジュエリーとしてダイヤモンド以外の様々な色石(いろいし)も数多く扱い、製作していました。扱う宝石としては3大貴石と呼ばれるルビー、サファイア、エメラルドが多く、徐々にルビーであれば微妙な赤の違い、サファイアであれば青の違いを知るようになりました。

 

そして上記の三大貴石のほかに半貴石と呼ばれる宝石(例えばガーネットやトルマリン、オパールなど)も扱っていて、その中のいくつかに上質の貴石を上回るような美しさ・輝きを放つ宝石が存在することに気づきました。

大倉堂として宝石を買い付ける機会がより増えていくにつれ、もっと多くの宝石を見るようになりました。その中に目を見張るような美しい輝き、色合いの半貴石が存在することを知るようになりました。

半貴石という名称は、貴石に比べて、硬度がやや劣り、価値的にも劣ると言われていたことに由来しています。というのも硬度が高いほど磨きやすい、つまり光沢が出やすいからです。今は宝石を磨く技術が向上し、三大貴石に勝るとも劣らない、とても美しい光沢が出るようになってきました。

そのうえ、もともと半貴石はニュアンスがある色合いや、微妙な違いの中間色のバリエーションの豊富さにおいて三大貴石をしのぐものがありました。

 

 

 

 

稀少なラウンドシェイプの中間色を使ったCandyシリーズ

 

 

 

 

 

 

そんな中間色の輝きに惹かれ、ガーネット、トルマリン、スピネルなど繊細な色合いで美しく輝く半貴石を買い付けることが増え、はたと子供の頃に心奪われた色鉛筆のことを想い出したのでした。原色の間に存在した、美しい名前を持った綺麗な中間色の色鉛筆。興味のある点と点は、いつかどこかでつながるものです。

 

日本人にとって中間色は、「自然の中における時の移り変わり」(時間ごとの葉っぱの色合いや朝夕の空の色合いなど)を映し出しているように感じたり、中間色から「調和」や「奥ゆかしさ」のイメージを感じたりと、とても親和性がある色だと思います。

 

 

ラグーントルマリン

オレンジピンクのパパラチアサファイア

 

 

 

大倉堂の商品にもたくさんの「中間色」が使われています。 

 

例えば通称ラグーントルマリンと呼ばれる石があります。緑に少しの青が入り込んだ、透明な海の深部に日差しが差し込んだような、美しい色合いのトルマリンです。他にも通称ミントガーネットと呼ばれる石があります。若草色に少しの黄色が入った色で、新緑の瑞々しさを感じさせるまばゆい輝きのガーネットです。

オレンジピンクのパパラチアサファイアは、空気の澄んだ日の美しい夕焼けを連想させる、なんとも形容しがたい美しい中間色の輝きを放ちます。

 

 

現物でしかわからない、光源によっても変化する微妙な色合いを御覧になって、ご自身にとって心に響く色をさがしてみてください。

 

 

 

 

大倉堂 OKURADO

大倉仁

 

 

 

 

▼ 宝石選びについて、中間色が美しい日本の風景について です

 

 

私の宝石選びの基準

 

本年もよろしくお願いいたします

 

コレクションが生まれるまで ~あぢさゐ~