私がどうしてジュエリーを創る仕事をしているのか。
少し堅い話で恐縮ですが今回はそんなテーマの話です。
大倉堂は自社でデザインをし、素材となる石を仕入れ、自社工房で製作しています。
私自身、デザインをすること、稀少で美しい石を探すことも好きですが、なにより自分たちで「創る」のが好きで、「創り出す」職人が好きです。
芸術作品によって人が心を動かす理由の1つは、アーティストや職人が「創り出す」ものに利益、作為、物欲がなく、むしろ「それらを超えた何か」を感じるからだと思います。今の時代ではアーティストや職人が「創り出す」行為は、本当に数少ない「純粋さ」が残っている世界だと思います。
現代は、日々ストレスのかかること、心痛むこと、理不尽なことが身の回りや世界の各所で起きています。それらは私たち人間の持つ恐怖心や欲や外からのプレッシャーから身を守るために起きているのかもしれません。
話は少し変わりますが、私はすべての物事や人間は相反する2つの面を持っていると思っています。
光と影。
燃える火と冷たい水。
澄んだものと濁ったもの。
作為のあるものとないもの等々。
その相反する2つは善悪とは関係なくそれぞれ必要不可欠なもので、お互いバランスをとりあって調和しています。
文頭の「私がどうしてジュエリーを創る仕事をしているのか」は、私なりにこの「異なる2つのことのバランスを取る仕事」をしたいからです。
日々起こる簡単に解決できない理不尽なこと、その清濁を併せ吞みながら進んでいる人達に、職人が「創り出す」純粋なジュエリーで2つのバランスを取ってもらいたいのです。
日常のことをしばし忘れ(日常から逃げるという意味ではなく、むしろ立ち向うために)、大倉堂のジュエリーで癒されていただければ何よりと思っています。
美しい宝石を使い職人が「創り出す」純粋な造型美に触れ、リラックスしていただき、「少し力抜いてみようかな」、「少し頑張りすぎかな」、「少し欲張りすぎかな」、「ちょっと譲ってみようかな」と感じてくれたらいいと思っています。
私自身はジュエリーをデザインし創り出す会社を営んでいるため、創り続けるためにある程度の利益を確保しなければいけない立場にいます。
工房で日々ものづくりに励む職人を見て一番反省しているのは、なにを隠そうこの私なのかもしれません。
2つの相反するものの組合せをモチーフとした「パレット」コレクション
*画像をクリックしていただくと詳細をご覧になれます
OKURADO
大倉仁
もしこちらのジャーナルをお楽しみいただけたのでしたら、こちらの記事もおすすめでございます▼